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神戸地方裁判所 昭和42年(わ)812号 判決 1972年4月28日

本店所在地

東京都港区赤坂二丁目一四番六号

近幾観光株式会社

右代表者代表取締役

小浪義明

本籍

東京都千代田区三番町九番地一

住居

右に同じ

会社役員

小浪義明

明治四三年八月一三日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官大口照出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人近幾観光株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人小浪義明を懲役六月にそれぞれ処する。但し、被告人小浪義明に対してはこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人近幾観光株式会社は、もと神戸市生田区下山手通二丁目二番地に本店を置き、風俗営業を主目的として同所においてキャバレー「新世紀」および「国際トルコセンター」を、大阪市北区堂山町一三六番地の一においてキャバレー「クラウン」および洋酒バー「憩」を経営していたものであり、被告人小浪義明は、同会社の代表取締役の地位にあって同会社の業務全般を統括掌理しているものであるが、被告人小浪義明は同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和三八年五月一日から同三九年四月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得額は七、九七七万四、一六六円で、これに対する法人税額は三、〇一六万四、一五八円であったにもかかわらず、売上げを除外し経費を架空計上するなどの不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、同三九年六月三〇日、所轄神戸税務署において、同署署長に対し、右年度における同会社の所得額は三、三七八万六、八三一円、これに対する法人税額は一、二六八万八、九八四円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正な方法により同会社の右事業年度における正規法人税額と右申告法人税書との差額一、七四七万五、一七四円をほ脱し

第二、同三九年五月一日から同四〇年四月三〇日までの事業年度における同会社の実際所得額は一一、二二五万六、一九〇円で、これに対する法人税額は四、一三五万四、七五七円であったのにかかわらず、前同様の不正な方法により所得の一部を秘匿したうえ、同四〇年六月三〇日、前記所轄神戸税務署において、同署署長に対し、右事業年度における同会社の所得額は六、七八九万一、三二〇円、これに対する法人税額は二、四九三万九、七八一円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正な方法により同会社の右事業年度における正規の法人税額と右申告法人税額との差額一、六四一万四、九七六円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

(以下大蔵事務官に対する質問てん末書は単に質問てん末書と略称する。)

判示各事実中ほ脱額を除くその余の各事実について

一、第八回および第九回各公判調書中の証人佐山恭一の各供述部分

一、佐山恭一(昭和四二年六月七日付)、山本坦および古川寿恵の検察官に対する各供述調書

一、被告人小浪義明の検察官に対する供述調書三通

一、被告人小浪義明の当公判廷(第一七回)における供述

判示第一および第二の各ほ脱額について

一、佐山恭一の検察官に対する同年六月八日付(二通)、同年六月一〇日付および同年六月一五日付各供述調書ならびに同年二月二八日付、同年四月一二日付および同年五月三〇日付各質問てん末書

一、広瀬昭および細井録郎の各質問てん末書

一、被告人近幾観光株式会社作成の自昭和三八年五月一日至同三九年四月三〇日事業年度の法人税額確定申告書写

一、国税査察官広原芳弘作成の「収税官吏作成の銀行調査書類」、「確認書、供述書綴」、「調査てん末書綴」「軽費内訳帳」および「収税官吏作成の総勘定元帳」と題する各書面

一、押収してある軽費明細簿二綴(昭和四五年押第一一六号の1の1、2)、材料在高帳二綴(同号の6の1、2)、請求書領収書綴一六〇綴(同号の12の1ないし160)、給料表九綴(同号の17の5、6、7および同号の18の2、3、4、8、9、10)、領収書四綴(同号の19の1ないし4)、近幾の観光リベート国保書類綴一綴(同号の20)、料飲税納入申告書綴一冊(同号の22)、手帳一冊(同号の23)および電話関係綴一綴(同号の27)

判示第一のほ脱額について

一、被告人小浪義明の昭和四二年五月三一日付質問てん末書

一、被告人近幾観光株式会社作成の目昭和三九年五月一日至同四〇年四月三〇日事業年度の法人税額確定申告書写

一、押収してある金銭出納簿二八冊(同号の3の26並びに同号の4の1ないし12、21ないし25および34ないし43)小切手帳三冊(同号の5の1ないし3)、材料在高帳二綴(同号の7および同号の8の8)、会計伝票二四綴(同号の9の25ないし48)、雑関係領収書綴一二綴(同号の14の1ないし12)、軽費明細簿一綴(同号の15)、現金出納帳一綴(同号の16)、給料表四綴(同号の17の2、10および同号の18の1、7)、内訳簿一綴(同号の21)および支払表綴一綴(同号の46)

判示第二のほ脱額について

一、押収してある金銭出納簿二〇冊(同号の3の14ないし25および同号の4の26ないし33)、材料在高帳一綴(同号の8、7)、会計伝票二四綴(同号の9の73ないし96)、雑関係領収書綴一二綴(同号の13の1ないし12)、給料表四綴(同号の17の1、8および同号の18の5、6)、現金出納簿一綴(同号の25)および領収書一綴(同号の26)

(法令の適用)

被告人小浪義明の判示第一の所為は法人税法(昭和四〇年法 第三四号)付則第一九条により同法による改正前の旧法人法(昭和二二年法律第二八号)第四八条第一項、第一八条第一項に、判示第二の所為は法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号にそれぞれ該当するので所定刑中いずれも懲役刑を選択するところ、以上は刑法第四五条前段の件合罪の関係にあるので、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役六月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

次に、被告人近幾観光株式会社の判示第一の事実は法人税法附則一九条により同法による改正前の前記旧法人税法第五一条第一項、第四八条第一項に、判示第二の事実は法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項にそれぞれ該当するところ、以上は刑法第四五条前段の併合罪の関係にあるので、同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人会社を罰金一、〇〇〇万円にすることとする。

なお、訴訟費用については刑事訴訟法第一八一条第一項本文を適用して全部これを被告人両名の連帯負担とする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山本久已 裁判官 山田敬二郎 裁判官 小川良昭)

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